Writer:管理人
粟生線活性化を語る上で避けては通れないのが他社線との乗り入れ計画。神鉄は沿線自治体などから長年提案され続けています。
今回はそんな乗り入れ計画についての議論があった第25回粟生線活性化協議会(2015年7月13日)の議事録を資料に話を進めていこうと思います。
この第25回協議会では、神戸方では阪急・阪神線との乗り入れ案が挙げられています。
これに対して神鉄は
「新開地での乗り換えについては、利用者にとって不便であることは承知しており、50年近く前から何度か検討をしている。神戸高速線に乗り入れようとすると、長田付近から地下へ潜り、大開あたりへ迂回した上で新開地へ接続することになる。詳細な検討はしていないが、概算で数百億円かかると考えている。」
「加えて、神戸電鉄は狭軌、阪急・阪神は標準軌である。両方の軌道を走行できるフリーゲージトレインなど、軌道幅の問題を解決するための車両を新設する必要があるほか、相手先との協議・調整も要するため、実現には
課題が大きいと考えている。」(原文ママ)
と考えています。
確かに、地下線というのは建設に膨大な費用が必要になります。なかなか現実的なものではないでしょう。
もし仮に構造上の問題を無視したとしても、神戸高速東西線(阪急・阪神・山陽)のダイヤは既にいっぱいいっぱいです。
阪神が乗り入れ先の近鉄のダイヤ乱れを阪急・山陽にも持ち込んでいる現状ではきっと乗り入れは不可能でしょう。
粟生方では北条鉄道との乗り入れが提言されています。
最初に記したように、この話し合いが行われたのが2015年の7月です。
これ以降、他社線乗り入れに関する話題は議論されていません。(私の確認が甘いだけかもしれませんが)
先ほどの「北条鉄道との乗り入れについて、神戸電鉄は電化であり、北条鉄道は非電化である。粟生線にディーゼル車を走らせることができないか過去に検討したが、粟生線は勾配がきつく、国内で販売されているディーゼル車では走行することができないので新たな車両を開発する必要がある。」という記述に関してですが、最近大きな進展がありました。
今年の3月4日のJRグループダイヤ改正から、非電化路線であるJR東日本烏山線とJR九州若松線では全列車が電車での運行になりました。
鉄道趣味を持っていない方にとっては意味がわからないでしょうから簡単にご説明します。
使用する車両に蓄電池を搭載し、終端駅に短い架線を設置。パンタグラフを通して列車の折り返し時間を利用して蓄電池を充電します。
このような形で非電化路線でも電車が運行されるようになりました。
JR九州のBEC819系電車「DENCHA」は電化区間内ではパンタグラフから給電しながら運転することもできます。
少し前の話題になりますが、近畿車輛が開発中の車両「Smart Best」は搭載したエンジンで発電した電力を動力としています。
こちらはまだ実用化には至っていませんが、自動車業界ではこの仕組みが搭載された日産自動車の「ノート e-power」が昨年より市販され大ヒットしました。
「非電化路線だから気動車で運行する」というこれまでの当たり前がここ数年で当たり前ではなくなってきています。
ある程度科学技術の発達した現代においては、劇的な技術革新は起こりません。
しかし、少しずつではありますが確実に技術は進歩しています。
一度議論したからおしまいではなくて、粟生線や地域を取り巻く環境の変化に合わせて継続的に考えを更新し続けることが大事なのではないでしょうか。
もちろん今回挙げた非電化路線で電車を走らせるというのはただの一例です。
こういう考え方もある、という感じに覚えておいてもらえたら嬉しいな…と思います。
(いち鉄道ファンとしては粟生線と北条線の乗り入れは見てみたいなとは思いますけど…)
レールバスはその簡素な構造から耐用年数が短いと言われています。
北条鉄道のフラワ2000形は間もなく製造から20年を迎えるため車両更新のタイミング。乗り入れを考えるには絶好のチャンスです。
神鉄と北条鉄道のような中小私鉄と第三セクターであり、電化路線と非電化路線の電車での乗り入れは前例もありません。
役所や企業というのはやはり賭けに出ることは難しく躊躇してしまいがちなものですが…。
当時の会長も「思い切ったことを考えていかなければ残せないと思う。」(原文ママ)と述べていますし、よそと同じことをするのではなく、新しいことを考えるだけでも、姿勢だけでも見られたらいいな…と思います。